危惧していたことが起こりました。神奈川県で眼科が突然閉院、前払いした手術費用が返ってこない、と言うニュースが今、情報番組などでも話題になっています。これから手術を受けようと考えてらっしゃる方の中には不安を持たれたり、あるいは単純に好奇心でこのニュースを見た方も多いと思います。
また、ワイドショーでは、「自由診療」「多焦点眼内レンズ」という言葉が必要以上にフィーチャーされており、我々を含む、この医療を正しく行っている施設にまで誤解が広がると困るので、きちんと解説しておきます。
まず、最初に大切な点は、多焦点レンズの手術をしている眼科は、アカデミック系とビジネス系の二つに大きく分かれ、この二つは全く相容れない別モノであるという点です。
多焦点レンズ手術は、高い技術力と知識経験が必要な手術です。
ここでハッキリと申し上げます。白内障手術に関する学会での講演、論文実績がゼロのところが「多焦点レンズ」を前面にアピールしている所は100%後者=ビジネス系で危ない所です。講演、論文のアカデミックな活動は、自身の手術成績の発表であり、また同業他者からの評価だからで、それがゼロで自らのHPでだけ何かを自慢してるのは、手術でお金儲けをしようとしているからと考えて間違いありません。
テレビでもチラッと出ていますが「海外から表彰」という表現。これは、学術団体ではなく、ある会社の眼内レンズを沢山使った(=買った)ということで、大口顧客として企業から表彰されているだけで、手術成績とは全く無関係です。手術件数日本一、という表現は、あるメーカーのあるモデルのレンズを、一番沢山買った、と言うことを誇張しているのです。
日本で診療していて、海外で本当に評価されている医師が、国内の学会で一切業績が無いということは200%有り得ません。
大抵は、訳の分からない外人(マーケット担当)と写した写真と、その企業からの感謝状です。
「では、本当に正しいアカデミック系とブラックなビジネス系を、私たち患者はどうやって見分けられるのか?」
簡単です。アカデミック系は、HPに必ず、論文、講演実績を載せています。そのページがなければビジネス系です。
同じ自由診療で、近視手術のICLに関しても全く同じ事が言えます。
また、時々「論文や講演と手術の腕は関係が無い」という負け惜しみを言う医者がいますが、素人も甚だしい恥ずかしい発言です。私の友達にそういう人は居ません。講演をしているから手術が上手いのではなく、手術が上手いから講演を依頼されるのです。
私も、海外からの輸入レンズを使う時は、返品が出来ないので、事前に数万円の輸入手数料をお支払いしてもらっています。何十万という事前の支払いは勿論求めていませんが、もし自己都合でキャンセルなどされた場合は、輸入手数料を我々が負担しなければならず、最低限の自己防衛策は講じているのが普通です。しかし、キャンペーンだの、今日なら○万円引きだの、手術の決心を急がせることは決してしません。
このような施策をとる眼科は、決断を急がせる理由があるのでしょう。資金繰りの問題だけでなく、「お金のことがおかしい」あるいは「実は近くに本当の名医がいる」ことに患者さんが気付かないうちに手術をしてしまいというのが通例です。
そしていつも言っていることですが、執刀医が術前後の患者さんを診ていないのに、このような手術をすることは、医療倫理を大きく逸脱しており、とくに、アルバイト医師にすべて手術を丸投げしているのにHPで積極的にこれを宣伝している所は、本当に悪質です。私のクリニックの近くにもそういう眼科があり、手術後の不具合が起きてから、私の所にいらしゃる患者さんが後を絶ちませんが、件の神奈川県でも私の友人の眼科が、やはり駆け込み寺のようになっています。手術を自分の肌で感じていない人が運営すると、必ずこういうことが起こります。これは医者ではなく、商売人です。
以上、今皆さんの不安を煽る報道について、内部の事情を詳しくご報告いたしました。