ICL(眼内コンタクトレンズ)は「半永久的に使える」と言われる一方で、何年もつかわからない、劣化しないか、といった不安を抱える人も多いです。
この記事では、ICLの寿命やレンズ交換の必要性、老眼や加齢による影響まで、専門的な視点からわかりやすく解説します。
10年後・20年後もICLで視力を維持できるのか知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
ICLの寿命はどのくらい?基本的な仕組みを理解しよう
眼内レンズの寿命は、半永久的といわれています。
レンズの素材や構造が非常に安定しており、体に優しい設計だからです。
ここでは、ICLの仕組みやレーシックとの違い、寿命に影響する要素をくわしく見ていきましょう。
ICLは「半永久的」に使用可能な視力矯正レンズ
ICLレンズは、コラマーと呼ばれる特殊な素材で作られています。
コラマーは生体適合性に優れており、目の中で長期間使用しても拒否反応や劣化がほとんど起きません。
また、このレンズは虹彩と水晶体の間に挿入されるため、角膜や網膜などの重要な組織に直接負担をかけることもないです。
その構造ゆえ、必要に応じて取り出しや交換もできる点が特徴。
つまり、ICLは「もとの状態に戻せる手術」でありながら、適切なケアを続ければ半永久的に使うことができる画期的な手術といえます。
ただし注意が必要なのは、今年から新たに日本にも導入された、IPCLというレンズです。こちらは、材質がアクリルで出来ています。白内障手術で使われる眼内レンズはアクリル製で、移植される位置が異なり虹彩から離れた場所ですが、ICLなど近視矯正用のレンズは、水晶体と虹彩に近いため、この素材がICLと同じ使われ方をして長期的に安全かは、今後の臨床データを待たなければなりません。
ICLでは度数が無いケースでは、この新しいレンズを使う意味がありますが、全ての手術をこちらのIPCLで行い、手術費用を安く設定している施設には、注意が必要です。中には、新しいレンズである点をことさらに強調して「プレミアムICL」などと名称を付けてアピールしている施設も有りますが、そういった施設は、そもそもの手術姿勢として疑問を持たざるを得ません。あくまで安心な有水晶体眼内レンズはICLです。
レーシックとの違い
レーシック手術は角膜を削って視力を矯正しますが、一度削った角膜は元に戻せません。
そのため、強度近視や角膜が薄い人では適応外になることもあります。
一方でICL手術は、角膜を削らずに目の内部へレンズを入れるため、角膜の形状を保ったまま視力を矯正できます。
この違いが、長期的な安定性の高さ、そして術後のクリアさにつながっています。
また、ICLなら、何年経っても眼の中の組織と癒着しないので、目の状態が変化してもレンズを入れ替えることができるため、将来的に目の見え方が変わっても柔軟に対応できます。
寿命を左右する要素
ICLレンズそのものは劣化しにくく、長期的に使用可能といわれています。
ほとんどの人は一生涯同じICLレンズで過ごすことができるでしょう。
しかし、目の状態は年齢や生活習慣によって変化します。
たとえば、老眼は、そのまま上から老眼鏡を掛ければ解決します。
白内障が進行するとその手術のために、ICLは同時に取り出します。ただし、白内障を手術すれば、ICLは必要なくなります。
また、稀に、手術を受けたあとにも近視が進行し、その視力変動によってレンズ度数の再調整が必要になる場合もあります。
つまり、ICLレンズの寿命は「レンズ自体の寿命」ではなく、「目がどのように変化するか」で決まります。
定期的な検診を受け、医師と目の状態を確認しながら使い続けることが大切です。
視力が落ちたらどうなる?再手術・交換のタイミング
ICLレンズを入れても、年齢や生活環境の変化によって視力が低下することがあります。
ここでは、近視や乱視が進行した場合の対応、白内障や老眼が出たときの処置、交換・再手術にかかる費用やリスクについて解説します。
近視・乱視が進行した場合の再調整
ICL手術後に近視や乱視が進行してしまった場合でも、再調整は可能です。
レンズを取り出して度数を変更した新しいICLレンズに入れ替えることで、見え方を改善できます。
また、度数の変化が軽度であれば、必要に応じて眼鏡やコンタクトレンズで補正するだけで問題ない場合もあります。
大切なのは、視力の変化を放置せず、定期検診で自分の目の状態を把握することです。
白内障や老眼になった場合の対応
ICLレンズ自体は劣化しませんが、加齢によって水晶体が濁る白内障や、ピント調節力が落ちる老眼は、ICL手術を受けていない人も含めて全ての人間に起こります。
白内障手術を行う際には、ICLレンズを取り出し、その代わりに白内障手術用の眼内レンズを挿入することで視力の回復が可能です。この場合、ICLは必要なくなるので、取り出したままです。
老眼の場合は、これも、手術を受けていない人(近視の無い人)と同様、ICLレンズを入れたまま老眼鏡を使用して解決です。多焦点眼内レンズは、白内障手術用のものですので、その時に用います。その場合、LASIKを受けた眼だと、このレンズ度数計算が狂いがちで、制度の点で問題がありますが、ICL既往眼では、影響はありません。
そのため、ICL手術を受けたあとに視力が変化しても、柔軟に対応できます。
交換・取り出し手術のリスクと費用目安
ICLレンズの交換や取り出しは、初回手術と比べて若干難度は上がりますが、ベテランの医師であれば、同じ~2,3倍の時間で手術が完了するでしょう。
ただ、まれに角膜の内皮細胞への負担や、術後の一時的なかすみなどが起こる場合があるため、慎重な判断が必要です。
費用はクリニックによって異なりますが、片目あたり30〜40万円前後が目安です。取り出すだけなら、手術消耗品分だけの少額になります。ただし、保険適用外となることが多いため注意しましょう。白内障手術は、通常通り、単焦点であれば保険診療で行えます。
再手術を検討する際は、信頼できる眼科で十分に相談し、術後のケア体制まで確認してみてください。
ICLを長持ちさせる「メンテナンス」と「検診」の重要性
ICLレンズは半永久的に使えるといっても、目の環境や体調の変化によってトラブルが起きることがあります。
ここでは、ICLレンズを安全に長く使うために必要なメンテナンスについて解説します。
年1回の定期検診でトラブルを予防
ICL手術後は、目の健康状態を確認するために定期検診を受けましょう。
検診では、レンズと水晶体や虹彩とのクリアランス(距離)や角膜内皮細胞の数、眼圧などをチェックします。
レンズが正しい位置に安定していれば問題ありませんが、まれに微妙なズレや目の構造変化が起きることも。
また、角膜内皮細胞は加齢とともに減少するため、定期的に測定することで早期に異常を発見できます。
目の乾燥・炎症・外傷に注意
ICLレンズはコンタクトレンズのように毎日の洗浄や交換が不要ですが、目の健康を守るための生活習慣はとても大切です。
ICLとは直接関係はありませんが、長時間のパソコン・スマホの使用、エアコンの利用などによって目が乾燥すると、眼球表面の炎症を引き起こしやすくなります。
目のダメージが積み重なると、ICLレンズが入っていても見え方が悪くなる原因になりかねません。
できるだけ目を乾燥させないために、日常的に目薬を使う、瞬きの回数を増やすなど意識してみてください。
異常を感じたら早めの眼科受診を
ICLレンズを入れたあとは、普段と違う見え方を感じたときに早めに受診することが何より大切です。例えば、視界がかすむ、光がにじむ(ハロー・グレア現象)、物が二重に見えるなどの症状がある場合は、目の中で何らかの異常が起きているおそれがあります。
面倒だからと放置してしまうと、炎症や眼圧上昇を招く原因になります。
「見え方がいつもと違う」と少しでも異変を感じたら、ためらわずすぐに眼科を受診しましょう。
年齢とともに変わる視力。ICLを長く使うために知っておきたいこと
ICL手術は20代で受けるのと50代で受けるのとでは、視力の変わり方や注意すべきポイントが異なります。
ここでは、年代別に見たICL手術の安定性と、視力を保つための選択肢について解説します。
20〜30代は長期安定期。効果が持続しやすい
20〜30代でICL手術を受けた場合、視力は非常に安定しやすいです。
この年代では近視や乱視の進行がほとんど止まっており、手術後の度数変化が少ないのが特徴です。
また、角膜や水晶体も健康な状態を保っているため、長期にわたってレンズの位置や見え方が安定するでしょう。
実際に20代で手術を受けた多くの人が、10年以上経過しても裸眼で快適な生活を続けています。
若いうちにICLを受けることで、長期間にわたって恩恵を受けられるでしょう。
40代以降は老眼や白内障リスクを考慮
40代を過ぎると、加齢とともに老眼や白内障といった症状が現れ始めます。
ICLレンズを入れていても、これらの症状を防いだり進行を遅らせたりすることはできません。
ただ、ICL施術は角膜を削らないため、老眼や白内障への対応がしやすいというメリットがあります。
白内障が進行した場合は、ICLレンズを取り出して、白内障の治療をすることで視力を再び回復できます。
老眼に関しても、遠近両用眼鏡やコンタクト、または白内障手術と同時に行う多焦点レンズを使った治療で見え方を補うことが可能です。
年齢に応じて柔軟に対応すれば、ICLレンズは40代以降でも生活する分には困らない程度の視力を維持できるでしょう。
ICLレンズの寿命に関するよくある質問(FAQ)
ICLレンズは「半永久的に使える」といわれていますが、実際はどうなのか気になる方も多いでしょう。
ここでは、ICLの寿命や交換時期、加齢による影響、視力変化が起きたときの対処法など、よくある疑問に簡潔にお答えします。
ICLレンズは一生使えますか?
ICLレンズの寿命は非常に長く、ほとんどの人が半永久的に使えるでしょう。ただ、目の状態が変化した場合は医師の判断で交換が必要になることもあります。
何年ごとに交換が必要ですか?
定期的な交換は不要です。
ICLレンズは長期間安定して使えるため、トラブルや見え方の変化がなければ入れ替える必要はありません。
ICLレンズを入れたまま老眼・白内障になったらどうすればいい?
老眼や白内障は加齢にともなって進行する、いわば自然現象です。ICLレンズを入れていても発症します。
白内障手術の際はICLレンズと濁った水晶体を取り出して、代わりに人工の白内障治療用眼内レンズを入れる、つまり通常の白内障手術で対応できます。
視力が下がった(近視が再度進行した)場合はどうすればいい?
視力が大きく変化した場合は、ICLレンズの度数を再調整し交換することが可能です。
軽度であれば眼鏡やコンタクトレンズで補えるため、まずは眼科で相談しましょう。
まとめ|ICLは「寿命が尽きる」よりも「長く付き合う医療」
ICLレンズは基本的に劣化しないため、半永久的に使用できます。
ただし、視力や目の状態は年齢とともに変化します。
長く快適に使いつづけるためには、定期的な検診と医師との相談が欠かせません。
ICL手術について気になる方は、ぜひ一度眼科にご相談ください。
