院長ブログ(医療の真実、医者の舞台裏)

2019.10.26

若い医師に、手術倫理を守って欲しい

始めにお断りしておきますが、殆どの医師達は、高い倫理感を持って手術技術の研鑽をしています。しかし、ここ数ヶ月で非常に憂慮すべき事態に直面したのでお話ししないわけにはいきません。

 

ご本人には症状の訴えが無かったにも関わらず、手術を勧められ、断る余地もなく(或いは、断るチャンスはあったけど勇気が出なかった)、手術を受けてしまったら、かえって見えにくくなった、と言う患者さんが、ここ4ヶ月で3名、近隣の医院から離れて当院にお越しになっているのです。拝見しますと、確かに疑問を感じるケースばかりで、中には、手術プロセスの一部で、しくじっている形跡の見られる眼もありました。はじめは,たまたま上手くいかなかったのかと思ったのですが、それらがすべて、同じ施設の同じ医師によるものなのです。これは偶然とは言えません。さらに、似たケースですが、手術直前に考え直して,当院に逃げ込む形でいらっしゃった、ある意味幸運だった患者さんも1名いらっしゃいました。

 

ここで、今,眼科手術特有の問題をご説明しなければいけません。

手術の出来る医師が居ない施設に、別の病院のアルバイト医師が出向いて手術をし、一件あたり数万円のギャラを受け取って帰ってくる,いわゆる「オペバイト」問題。特に、医師の中でも収入が無い大学院の学生さんが学費、生活費を稼ぐために行っているケースが多く、そのような施設では「大学病院の専門の先生がいらっしゃる」と謳ってはいますが、実際は、その分野を勉強中で、これから博士号を取ろうというお医者さんです。入院病棟で毎日執刀医と接触する外科などと異なり日帰り手術が多く、手術をお手軽に捉えられがちな眼科特有の事象と言えます。

今回、私のクリニックを訪れた可愛そうな患者さん方も、まさしくそのケースでした。

 

この様なケースの一番の問題は、オペバイトの先生は、一度の出勤で、出来るだけ多くのアルバイト料を稼ぎたいために、手術の必要の無い患者さんにまで手術を勧めたり、患者さんに「手術を受けるかどうか少し考えてもらう」余地を与えない、そして施設責任者も、手術件数が増えると収益が上がるため口を挟まない、更にもう少し裏の事情をお話ししますと、クリニックと契約しているコンサルタント会社が、中間マージン目当てに高額な医療機器購入を勧め、病院はその投資を回収する必要が生じる、それにより、必要の無い手術が横行してしまう、という構図です。

 

21世紀に入って20年も過ぎた、先進国の日本で,この様な蛮行が通っていたことが大変残念ですが、更に恥ずかしいことを正直に明かしますと、これが、私の所属する医局の大学院生でした。私が謝っても、この患者さん達の眼は元には戻りませんが、京都から手術関連学会理事として立場のある私の、指導啓蒙が不足していたこともその一端と、謝罪させて頂きたいです。

 

日頃の学術活動、講演活動の中では、正しい手術技術の普及に尽力していますが、もっと手前の「術者としての倫理感の醸成」からやっていかなければいけないか、と考えを改めた次第です。
かなり辛口のコメントにはなりましたが、大学病院に気を遣わなければならない立場の医師が殆どの中、私のように、大学医局とフラットな関係にある医師が、このような言いにくいことを言うのも、努めの一つと思っています。但し、これからも、後輩達をサポートしてゆく気持ちには変わりはありません。