院長ブログ(医療の真実、医者の舞台裏)

2020.08.15

教科書を任される、と言うこと

眼科手術関連の教科書を書きました。もちろん一冊丸々書いたのではなく、白内障手術の部分を執筆担当した、と言うことです。この本は、瞼から白内障,緑内障、網膜の手術まで,眼科の手術の全てを網羅した手術書で、各分野のエキスパートに協力要請があり、執筆者が集められて書くのです。

 

教科書という言葉から思い出すもの・・・多くの方は、小学校、ランドセル、せいぜい中学高校時代でしょうか。

 でも、我々医師の世界にも、教科書はあります。実際には「教科書」と書いて売られてるいわけではないのですが。

医学関連の書籍は、俗に言う,教科書と雑誌に分かれます。他にも、製薬メーカー・医療機器医療材料メーカーが主体で作成する商業的な冊子も、一定の普及数はあると言えます。また、(実は,私ももうすぐ発刊するのですが)一般の方向けの本、(家庭の医学や、「癌は切らずに治す」とか「花粉症は治る」など魅力的なタイトルのついた本)、も出版物ではありますが、これらは、医師の世界では,仕事には含まれない,業績としても評価はされないものです。

話を戻しますと、まず、雑誌というのは、(雑誌と聞くと、漫画雑誌や週刊誌のイメージから、軽いものを想像されますが、実はそうではなく)ジャーナル(journal)ともよばれ、最新の知見や論文、著名な医師に依頼する解説論文、特集記事などの載っている、定期的に刊行されるもので、我々医師(に限らず、全ての業界、全ての研究者)の世界では、ここに自身の論文を載せることが、一定の評価となります。テレビのニュースでも、しばしば「○○の結果がNew England Journalに載りました」とか、最近では,コロナ関係で、「○○の研究報告が、科学雑誌に掲載されました」などと お聞きになった方も多いと思います。あの小保方さんの「STAP細胞」もNatureという超一流科学雑誌に載ったことで、あれだけニュースになったのです。

さて、やっと教科書の話ですが、これは、新しい知見ではなく、既に一般化された考え方、診察や検査、診断方法、手術手技などを解説した、若い先生だけでなく、多くの日常の診療現場で働く医師達の為に作られるものです。「お医者さんだったら、そんなもの、要らないんじゃないの」と思われる方が居るかも知れませんが、そうではありません。医療に必要な知識や準備は膨大では済まない、超膨大で、新規のものも次々と増えてきます。これらを全て分かっている医師なんて居ません。医師が、一般の方と違う点は、こういった教科書や解説書を読んで、理解、実践できる能力がある、と言う事です。

 その意味で、今回の,手術書制作に携われたことは、今と未来の医療現場に、少しでも貢献できる仕事として、意義深かったと思います。