院長ブログ(医療の真実、医者の舞台裏)Blog

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水と医療は、ただ(無料)じゃない

未だ、記憶に新しい、と仰る方もいるかと思いますが、以前、大変憂慮すべき話題が,新聞テレビで扱われていました。ご存じでしょうか?皮膚疾患治療薬の「ヒルドイド」という医療機関向け医薬品に「美肌効果がある」と言う間違った評判がSNSなどで流れ、主に若年~中年の女性が美容目的で皮膚科医療機関を訪れ、処方を求めている、というのです。しかも、この様な不適切な処方に使われた医療費が年間90億円を超えている、との推測もあります。

 

一つ目の問題は、副作用その他のデメリットを考慮することなく、医薬品を本来の目的以外のことに使うことのリスク。これは、健康と医薬品に対する認識の低さから来るものですが、これについては、今回は触れません。「薬には、作用と副作用がある」普通は誰でも知っていることです。

 

次に二つ目の問題です。テレビやメディアは、医療とお金の問題には、あまり鋭く切り込みたがらないのですが、私がここで強調したいのは,むしろこちらの問題です。

 

「日本人は、水と医療を、ただ(無料)だと思っている」。先進諸外国から逸脱した日本人の感覚を揶揄したこの言葉は、かなり以前からあります(ただほど高いものは無い,と言う言葉もありますが)。

河川山岳の豊富な自然に恵まれた日本では、水道の蛇口を捻れば飲める水が出てきますが、海外では昔も今も、そう言うわけにいきません。国外では、水はお金を出して買うものです。今でこそ日本でもミネラルウォーターが売られていますが、どちらかというと,豊かさや健康志向の副産物でしょう。

 

同様に、医療に関しても、日本の皆さんが、医療機関窓口で支払う料金(いわゆる自己負担額)は、海外では信じられないほど安く、月々支払っている保険料も、世界で飛び抜けて安いのです。しかも、日本の医療水準は非常に高い。これは、国民皆保険制度のお陰なのですが、このお陰で窓口支払額が安いことが、医療における,国民の金銭感覚を狂わせてしまい、本当は,一つ一つの医療行為には、莫大な材料費、薬剤費と人件費が掛かっているのに、その認識が希薄になってしまっています。

しかし、実際には、みなさんが病院にかかられたとき、窓口で支払う額の39倍の額が、同時に国のお金から出ていっていることを意識されているでしょうか。

 

 最近は「医療もサービス業」と言って、病気を治すという本来の目的以外の部分で過剰なサービスを売りにするクリニックもあるようですが、病院は、ホテルやレストランとは明確に違います。それは、ホテルやレストランでは、サービスにかかる費用を、お客さんが全て自分の財布から支払いますが、医療機関では、自己負担は、ほんの一部。残り大半は、国のお金を使ってサービスを受けているのです。ドラマやコントに出てくるチンピラが「こっちは金払ってんだぞ」の台詞も、医療機関では当てはまりません。

 

これが分かっていれば、最初にご紹介した、「高額な美容液の代わりに、病院でヒルドイドを処方してもらおう」などという発想は、恥ずかしくて出来ないはずです。赤の他人が納めた税金や保険料から、ご自分の美容液の代金を支払ってもらっているのです。国民医療費の高騰が毎日のようにニュースになっている今、これをする人の神経とは如何なものでしょう。

 

当院のブログを御覧になっている方は、みな聡明な方で、この様な事はないとは思いますが、これを機会に、いま一度、医療の大切さと、医療費の意味を考えて頂けたら幸いです。

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