院長ブログ(医療の真実、医者の舞台裏)

2020.04.10

手術精度の向上に思う

最近の白内障手術は、様々な技術革新によって、いろんな意味で、すごく良くなってきました。
いろんな意味で、と書いたのは、一つは患者さんの負担です。私が研修医の頃は、白内障手術でも1週間ほどの入院、そして日々の術後点滴(病室を回って、点滴の針を刺しにゆくのが、毎朝の研修医の仕事でした)、そして厳しい術後安静が求められていましたが、今や、皆さんご存じのように、都会では多くの白内障手術が日帰りで行われていて、受ける方も、ずいぶんと楽になったと思います。

 これと同じくらい大きな変化が、精度の向上です。
精度は、大きく分けて、入れるレンズの度数と、乱視についてです。
手術で眼を切ると、球体の眼球は、僅かに変形します。そして、その変形は、乱視を生むのですが、手術機器や眼内レンズの改良によって、手術に必要な傷口の大きさが、飛躍的に小さくなってきたため、この術後の乱視も、とっても小さくなりました。

 そして、もう一つの、入れる眼内レンズの度数です。これが、患者さん一人一人で違うわけですが、メガネやコンタクトレンズのように、いろいろ試して見え方を確認して貰うことが出来ません(当たり前ですよね。手術中に入れるのですから)。ですので、手術前に角膜のカーブや眼球の奥行きを測って、そこから計算して決めているのです。そう、実測ではなくて計算なのです。
この計算方法というのが、なかなか理想的なものが出来ず、世界中の眼科医が、今も頭を捻って、日々改良されているのです。かなり良くなってきました。また、その手前の行程である、眼球の奥行き(眼軸長と言います)の測定も、直接物差しで測れませんので、音波や光を使って測定しているのですが、これの精度も、今や相当良いもので、それらのテクノロジーのおかげで、白内障手術の精度は、以前とは比べものにならないほど高くなってきました。

 しかし、本題はここからで、いくら精度が高くなっても、目指すゴール設定が、患者さん個々によって違うはずで、これが間違っていれば、元も子もありません。
 目指すゴールとは、その患者さんが、術後にどの辺りの距離を一番よく見たいか、何を重視したいか、と言う事なので、職業やライフスタイルや、元のメガネの使い方などによっても全く異なって来ます。これを引き出すのは、医師の話術であって、執刀医の仕事は、既にここから始まっています。つまり、いくら器械やレンズのテクノロジーが発達しても、一番大切な部分は、患者ー医師間の会話なのです。

デジタル技術によって、手術精度が上がっても、いや、上がったからこそ、コミュニケーションというアナログなものの大切さが際立つ、それが医学という学問の、特殊なところです。